最終章 星に願いを

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 こないだと同じように、しばらく二人で穏やかな沈黙にひたる。  換気のために少しだけ開いた窓から入り込む冷たい風が白いカーテンを揺らす。  そのパタパタという微かな音が耳に心地よい。  こうしている時間が愛おしい。  けど、今日は “誤解” を解きに来たんだ。  みっくんママが戻るまでに話さなきゃ。 「実樹……。今日は、こないだの話の続きをしにきたの」 「うん」 「あの……“誤解” って、どういうこと?」 「……お前は、俺が “お前のこといらない” って言ったと思ったの?」 「うん……。幼馴染みなんていらない、あたしなんていらないって言われたと思った」 「そっか──」  実樹は少し考え込んでいるようだった。 「あの日さ」  実樹は言葉を探しながら話を始めた。 「タウン誌の記事のことと、ハグのことと、色んなヤツから “ホントはどうなんだよ?” みたいに詮索されてさ。俺の人生の中で、いちばん “幼馴染み” って言葉を使って説明してたんだよ。 “幼馴染みだからつい冗談で取材受けた” “幼馴染みだからハグくらいするよ” って……。でもなんか、言ってるうちに、なんで俺こんなに “幼馴染み” を言い訳にしなきゃいけないんだろうって思えてきて……」  あたしは黙って聞いている。 「それでさ、“幼馴染みだから” って言い訳しなかったらどうなんだろう、って考えた」  胸の鼓動が早まる。  実樹にとって絶対的存在だったあたしたちの関係を抜きにして考えたら──? 「タウン誌の取材でお前とカップルに間違われたときはさ、素直に嬉しかったんだよね。だからつい悪ノリして、そのまま嘘をつき通してみたくなった。取材した人も全然疑わなくて、“ほんとに仲良しなのね” なんて言われて、調子に乗ってた。お前に言われて、もしかしたら一花や学校のヤツがその記事見るかも……って思ったけど、“幼馴染み” が言い訳になると思って深く考えなかった」  それって……  “幼馴染み” だから恋人のフリをしたわけじゃないってこと──?
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