第一章 外せない足枷

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 今日も部活が終わった。  着替え終わって部室を出る。  さっきまで三年の先輩達が猛練習してたテニスコートは薄暗くなった風景の中に沈んで、ネットの白さだけがぼわんと浮かび上がっている。  テニスコートの横を通っていつものように南門に向かうと、人の影が見えた。  誰なのかはすぐわかる。  シルエットだけであたしの鼓動を早くするのは、彼だけだから── 「山井さん待ってるの?」  門の脇にたたずむ実樹にあたしは声をかけた。 「違う。お前を待ってたの」  あたしを見て実樹が微笑む。  少し大きめの前歯がこぼれる。  形の整いすぎた涼やかな目元が少したれて細くなる。  ああ。実樹の笑い方だ──  あたしだけが知る実樹らしさに弾む心を隠すように、緩む口元にぎゅっと力を入れる。 「ヤバイよ! 用があるなら家に帰ってからにしてよ。こんなとこ見られたら、また山井さんになんて言われるか……」  周囲をキョロキョロ見渡すあたしに、実樹がクスッと笑った。 「大丈夫だよ。あいつとは今日別れた」 「はぁ!?」  大げさに驚くふりをしつつ、内心はちょっとほっとする。    今回も長くは続かなったんだ。  実樹の隣を歩く女が再びあたしだけになる嬉しさ。  けれど、同時にがっかりもする。  その場所はきっとまたすぐ誰かに奪われるっていう悲観的予測。  予測が現実になったときの軽い絶望。  あたしはこのアップダウンを何回繰り返せばダメージを受けなくなるんだろう?
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