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けれども、次の日。
朝、一花といつも待ち合わせている電車が駅のホームに着いたときだった。
「おはよう。今日は一本早い電車に乗れちゃったから、先に学校に行ってるね」
俺の携帯に一花から届いたメッセージ。
こんなこと言うの珍しいなと思いながら、俺はいつもの電車に乗った。
学校にいる間に、一花から再びメッセージが届いた。
「今日はやっぱり早く帰るね。実樹君は部活がんばってね」
一花はいつも美術室で絵を描きながら、俺の帰りに合わせて待っていてくれる。
今日俺を避けているのは、やっぱりまだ誤解が解けていないからか……?
駿汰に今日は部活を休むと伝えて、俺は南門で一花を待った。
制服姿で待つ俺に気づいて、一花は戸惑うような顔をした。
「どうして……? 今日は一人で帰るって伝えたのに」
「昨日の今日でそんなこと言うの、どう考えたっておかしいだろ? 一花がまだ誤解しているようなら、ちゃんと説明したいから」
俺がそう言うと、一花の顔がこわばった。
「誤解……なのかな。ほんとに」
「……どういうこと?」
「私、昨日は実樹君を信じようって思った。わざわざ私に説明しに来てくれたのが嬉しかったし……。友達から送られてきたタウン誌の写メも削除してしまおうと思ったの。……でも、消そうと思って改めて写メを見て気づいてしまったの。晶ちゃんと写ってる実樹君、私といるときより自然で優しい笑顔だった。誰が見ても恋人同士にしか見えないくらい、二人とも幸せそうだった……」
一花の目が涙で潤む。
「それでね。最近、実樹君がいろいろ考え込んで悩んでいることに思い当たったの。もしかして、私が実樹君を苦しめてる原因なんじゃないかって」
「そんなこと……。一花が原因なんてことあるわけない」
「私も、自分が原因なんて思いたくない。だから今日は実樹君に会いたくなかった。私に一日会わないことで、私を恋しいって思ってほしかったの……」
一花がそう言ったとき、南門の正面にある横断歩道の青信号が点滅した。
一花は泣きながら走って横断歩道を渡った。
「一花! 待てって──」
今俺が一人になったら、また迷宮に入り込んでしまう。
このままでいいんだって俺に思わせてほしい──
俺はそんな自分勝手な理由で一花を追いかけようとした。
そして、事故に遭った。
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