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事故に遭った日は朦朧とした意識の中で応急処置やいろいろな検査があったみたいだ。
翌日、俺は大腿骨骨折の手術をした。
手術の翌日、一花が初めて見舞いに来た。
「ごめんなさい……っ! 本当にごめんなさい!! 私のせいで……」
涙を流しながら謝る一花を見て、逆に申し訳ないと思った。
「飛び出したのは俺が悪いんだから、気にしなくていいよ。……それにごめん。俺が思っていた以上に、俺は一花を傷つけてたんだな」
けれども俺は今から一花をもっと傷つけることを言わなければならない。
昨日の晩、ずっと俺が考えて出した結論を。
「……俺、自分で自分の気持ちがわからなくなったんだ。こんな状態で一花と付き合っていたら、この先もっと一花を悲しませるし、傷つける。だから…………俺と別れてほしい」
一花は大きく目を見開いて絶句した。
それから、大粒の涙をぽろぽろとこぼして、声にならない嗚咽をもらした。
「それ……、私が、実樹君をこんな事故に遭わせたから……? それとも、やっぱり晶ちゃんが好きだから……?」
「どっちでもないよ。俺、自分が今、一花のことをどう考えればいいのか、俺自身がどう行動すべきなのかわからなくなってる。一度ニュートラルに戻したいんだ。一人になって冷静に考えて、それでもやっぱり一花のことが好きだって思えたら、改めて一花に告白させてほしい。でも、絶対そうできるって約束はできない。だから、一度別れてほしいんだ」
傷つけてるってわかっていて言うのは辛い。
けれど、このままなんとなく続けていくのは駄目な気がした。
「そしたら実樹君、晶ちゃんのとこに行っちゃう──」
嗚咽の中で一花がそんな言葉を漏らした。
「そんなことはないよ……。晶にはもう駿汰がいるし、俺らはただの幼馴染みなんだから」
自分で言った言葉に傷ついた。
けれども晶にとって俺は幼馴染み以外の何者でもない。
その関係を壊せば、俺は晶という存在そのものを失うことになる。
だから決めたんだ。
俺は晶とずっと幼馴染みのままでいる。
その気持ちが揺るぎないものになるまでは、一花とも他の女とも中途半端に付き合って傷つけるべきではないって。
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