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次の日から、一花は本当に毎日見舞いに来てくれた。
俺の前では涙を一度も見せず、いつものようにニコニコしている。
きっと家では泣いているんだろうと思う。
それを思うと本当に申し訳ないと思った。
晶は一ヶ月以上、一度も見舞いに来なかった。
こんなに晶の顔を見ないことはなかったと思う。
胸が苦しくなったけど、これは晶と幼馴染みとしての関係を続けていくための試練だと思うことにした。
*
終業式の日に、晶はテニス部の代表としてようやく俺の見舞いに来た。
久しぶりに見る晶の顔に俺は懐かしさを覚えてほっとした。
やっぱり晶の存在を失くしたくはないと心から思った。
けれど、あの日俺が言った “幼馴染みじゃなきゃよかった” という言葉を晶が誤解していることを知った。
晶は、俺があいつを要らないって言ったと勘違いしたようだった。
そんなわけがない。
もしそうなら、俺が迷宮で苦しむはずがない。
俺はやっぱり一花の気持ちに応えられず、未だに迷宮の中にいる。
*
冬休みに入って間もない今日、リハビリを兼ねてエレベーター前まで松葉杖で一花を送った。
そのついでに、俺は携帯OKのエリアで電源を入れてメールチェックをした。
すると、晶から、今日の午後見舞いに行くと連絡が入っていた。
きっと晶はこないだの誤解を解きにくるはずだ。
俺はちゃんと言わなきゃいけない。
笑顔で晶に言えるだろうか。
”俺には晶が必要だ。
だから幼馴染みでいるよ。
これからも、ずっと”
って。
晶を失くさないために────
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