最終章 星に願いを

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 冬休みに入ってから、あたしはずっとそわそわしている。  二週間ほどしかない短い休みのわりに、予定がつまっている。  学校の宿泊施設での泊まり込みの合宿。  家族でのお正月旅行。  予備校での冬期講習。  それに学校の課題もやらなくちゃ。  実樹のお見舞いに行くとしたら今日しかない。  一花ちゃんに会うかもしれないという心配はある。  実樹の「誤解だ」っていう言葉を聞いてからは一花ちゃんへの嫉妬心も薄れた気がするけれど、一花ちゃんのいる前で実樹と込み入った話はできないし、二人が仲良くしているのを見るのはやっぱり辛い。  けれども、一刻も早く実樹の言葉の続きが聞きたい。  あたしが誤解していたとしたら、実樹の本心はどうなんだろう?  “幼馴染みじゃなきゃよかった”  実樹の言った言葉の本当の意味を知れたら、あたしは安心できるのかな──  家にいるとぐるぐると同じことばかり考えてしまう。  あたしは意を決して実樹のお見舞いに行くことにした。  *  昼下がりの病院はこないだテニス部で来たときよりも無機質な空間に思えた。  冬の日差しが反射して明るすぎるほど白い壁の廊下を緊張しながら歩く。  ドアの前で一つ深呼吸する。  コンコン。 「はーい」  あれ?この声……  ドアを開けると、みっくんママがいた。 「あらぁ! あーちゃん来てくれたの?」  みっくんママが嬉しそうに立ち上がる。 「こんにちは。冬休み、今日くらいしか来れそうになくて」  実樹を見ると、母親がいるせいか少し照れくさそうにしている。 「よぉ」と、いつもよりぶっきらぼうな挨拶。  みっくんママの前ではいつも少しぶっきらぼうな態度をとる実樹だけど、実はけっこう仲良しな親子なのをあたしは知っている。
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