最終章 星に願いを

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 雲ひとつない冬の青空に、真っ黄色のボールが高く浮かぶ。  最も高く、一瞬ボールが静止した瞬間に、振りかぶっていたラケットで思い切り打ち抜く。  パコーーン  突き抜けるような気持ちのいい感触とともに、ボールはネットの向こうへ流れ星のようにまっすぐ消えていく。 「ナイスサーブ!」  後輩たちの掛け声が冷たく澄んだ空気の中で響き渡る。 「晶、今日調子いいじゃん。ファーストサーブめっちゃ入ってる」  後ろで順番を待つ奈央が声をかけてくれる。 「サンキュ」  あたしは短くそう言うと、再びラケットを肩越しに振りかぶり、左手に持ったボールを空に返すようにまっすぐ投げ上げる。  今日からテニス部の合宿が始まった。  学校の宿泊施設を借りて、一泊二日で練習をする。  コートでの練習やゲームだけでなく、ランニングや筋トレなんかの基礎練もみっちり入っていてけっこう厳しい。  でも今は体を使って練習に打ち込むことが気持ちいい。  あたしは心に決めたんだ。  もう迷わない。  額ににじんだ汗をリストバンドでぬぐって、どこまでも澄んだ青空を見上げた。  たとえ自分が傷ついても、  誰かを傷つけても、  あたしはもう迷わない────  *  青雲寮と呼ばれる宿泊施設の食堂は、普段は学食として生徒たちの憩いの場になっている。  今日の夕食は、そこでの一番人気であるチキンカレーだった。  夏休み以来の合宿とあって、顧問の先生も部員に混じって和気あいあいと談笑している。  牧田君や後輩の男子達と盛り上がっている駿汰に声をかけた。 「駿汰。……ちょっといい?」 「ん? どーした?」 「後でさ、話があるんだ。消灯前に青雲寮の外にちょっと出られる?」 「……ん。わかった」  駿汰はいつものようにニッと軽く微笑んだ。  いつもと変わらない駿汰を見て、あたしの心は痛くなる。  でももう決めたんだ。  迷わないって────
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