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入浴をすませ、パジャマ替わりのスウェットの上にフリースのジャンパーを羽織って外に出た。
青雲寮と体育館の間の中庭で、ベンチウォーマーを羽織った駿汰は上を向いて立っていた。
「ごめん……。待たせちゃった? 寒かったでしょ」
「おお。けど、見てみ。星がよく見える」
駿汰と同じように、上を見上げる。
冷たく澄んだ冬の夜空にチラチラと優しく星たちがまたたいている。
林間学校で駿汰と見上げたきらめくような星空には及ばないけれど、
それでもあたしはあの時のことを、駿汰の言葉を思い出さずにはいられなかった。
「……泣かなくて大丈夫だよ」
上を向いていたあたしに、駿汰が優しく言う。
「あ……あたし、いつの間に──」
慌てて涙をふく。
だめだ。ちゃんと言わなきゃ。
「駿汰。あたし……あたしね…………」
「わかってるって。実樹のとこへ行くんだろ?」
「……っ。どうして──」
「そりゃあ、わかるよ。……てか、わかってた」
駿汰はいつもどおりニッと微笑んで言った。
「実樹がさ……。晶に “幼馴染みじゃなきゃよかった” って言ったんだろ? 実樹がその鎖を切ったらどうなるかくらい、俺はわかってた。だから、俺はあの時お前を抱きしめて “さよなら” したんだ」
「そうだったんだ……」
駿汰に多くを語るつもりはなかった。
けど、この夜空のように広がる駿汰の心の大きさに、あたしは最後まで甘えてしまった。
「でもね……。実樹は結局鎖を切らないことを選んだの。これからもずっと、あたしと幼馴染みでいるよって……。あたしが実樹と幼馴染みでいることを望んでいるって思ってるみたい。だから……あたしからちゃんと鎖を切るって、足枷を外すって決めたんだ。実樹にまた足枷をはめられるかもしれないけど、あたしは何度でも外すって。たとえ実樹を失って、自分が傷つくことになっても──」
「そうか」
駿汰は白い息を吐きながら、何度も軽くうなずいていた。
「お前が傷ついたら、いつでも俺がいるよ。……って言いたいところだけど、それは言わないことにする」
星空を見上げていた駿汰が、あたしに向き直る。
「晶、後ろを向くなよ。傷ついても、前を向け」
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