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あたしをまっすぐに見つめる駿汰の目はとても優しかった。
「俺は実樹の親友だからわかる。あいつも今揺れている。晶が真剣にぶつかっていけば、実樹にきっと思いは通じるから」
「駿汰……」
冷たくなった頬に涙が流れる。
涙ってこんなに温かいんだって感じる。
あたしは結局、駿汰の気持ちに応えられなかった。
大きくて優しい胸に飛び込めなかった。
けれど、「ごめんなさい」なんて言葉は、駿汰にあまりにも失礼だ。
「ほんとに……ほんとに、ありがとう」
あたしの気持ちが駿汰にまっすぐ届くように、
この星たちと一緒に駿汰の心に降り積もるように、
できるだけゆっくりと、そしてはっきりと言った。
「ん」
駿汰はまたニッと微笑んだ。
青雲寮の窓から漏れる光が、駿汰の目元で微かに反射していた。
「実樹、退院してもしばらくは登下校で歩けないだろうな……。俺はもうお前を送り迎えしないけど、お前は一人で大丈夫か?」
「うん。大丈夫。一人でも歩けるよ」
「そうか」
駿汰を振り回したあたしのことをそこまで気遣ってくれるんだ。
でも、あたしにはもう覚悟ができている。
安楽坂を一人で上る覚悟も。
「まあでも、あれだ。送り迎えはしねーけど、友達はやめないでくれよな」
「当たり前だよ! むしろ、友達やめないでいてくれるの?」
「当たり前だろ?」
駿汰とあたしはニッと微笑み合った。
そして、どちらからともなく、また星空を見上げた。
夏の日の星降る夜、あたしは駿汰に “変わらなくていい” って言葉をもらった。
冬の星座が静かにまたたく夜、あたしは駿汰に “傷ついても前を向け” って言葉をもらった。
正反対の言葉だけれど、どっちも星と一緒にあたしの心に降ってきた言葉だった。
静かに。優しく。ゆっくりと──
傷ついても、もう迷わない。
冬の夜空を眺めながら、あたしはもう一度強く心に誓った。
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