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一色紗夜子、中学二年生。
三年生を差し置いて、彼女は『第七中の女王様』として知れ渡っていた。
サラサラな黒髪、白い肌、黒目がちな瞳。
容姿だけで見ると「あの子、ちょっと可愛いかも…」で終わる。
だが、本人に会うと一瞬でイメージは変わる。
サラサラな黒髪は壁となり、白い肌は髪と瞳を更に目立たせ、黒目がちな瞳は有無を言わせぬ強い目力を生む。
容姿だけではなく、彼女が持つ『絶対的な』雰囲気もそうだった。
その場にいるだけで、周りに存在を確認させるような強い存在感。
曖昧な答えを一瞬でイエスかノーのどちらかに変えてしまい、求めていること以外は言わせない圧力。
まるで、絶対服従を言われているような、彼女だけ人を操れるかのように感じさせる、そんな雰囲気。
生まれついてこの雰囲気を持っている紗夜子は、ずっと中心に置かれ、崇められていた。
小さい頃から、何かを決めるときには必ず誰かが「紗夜子ちゃんもこれでいい?」と尋ねてくる。
元々あまり喋らない紗夜子は自分から意見を言うことはなかった。というより、言う必要がなかった。
「いい」と言えばすぐに決まるし、「嫌だ」と言うとすぐに違う意見に変えられる。
一度だけ、何でも聞かれるのが面倒になって「好きに決めれば」と言ったことがある。
紗夜子は怒られるだろうと思っていたが、結果は予想と全然違った。
紗夜子がいなくなると、誰も何も決められなくなったのだ。意見を言うこともなければ否定も肯定もしない。
この時から、紗夜子が「好きに決めれば」と言うことがなくなった。
私が言わないと何もできない。
なんとなく、でもしっかりとそう感じたからだった。
『第七中の女王様』
それは、『絶対的な』雰囲気を持つ一人の少女のことだった。
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