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時刻は九時を過ぎたばかり。それほど遅い時間帯でもない。
時計を確認しながら言葉を返すと、また数秒ほどの沈黙が流れた。
「……あの、駅前にコンビニがあるでしょ? そこまで来てほしいの。どうしても今すぐ行かなきゃいけない場所があって。乗せていってもらえたらなって……」
「そんなの、彼氏に頼めばいいだろ?」
「彼は……今無理だから。お金も無いし、たっちゃんしか頼める人思いつかなくて。お願い、送るだけでいいから」
元カノの口調は、何だか酷く切羽詰まったような感じで、悪ふざけやオレを騙そうとしているような気配は窺えない。
「お願い、たっちゃん。ホントに困ってるの」
今にもぐずりだしそうな元カノの声に、オレはため息を一つついてから
「わかったよ。駅のコンビニだな? すぐ行くから待ってろ」
と声をかけ、テーブルに置いていた車のキーを掴み立ち上がった。
「あ、ありがとう! 待ってるから。ホントにありがとう!」
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