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事故車に気を取られていたオレは、そう声をかけながら助手席へ顔を向け、そこで言葉を失った。
「……?」
たった今まで隣にいた元カノが、いなくなっている。
一瞬車を降りたのかと思ったが、そんな音も気配もなかったし、そもそも外にも元カノの姿がない。
「おい、どこ行ったんだよ!」
慌てて車を降り周囲を見回すも、人の気配も音もなくシンと静まり返った空間が漂うだけ。
「どうなってんだ……」
混乱しかけながらも、ただ立ち尽くしているわけにはいかないと、オレは恐る恐る事故車へ近づき人が乗っていないか確認しようと中を覗き込んだ。
横倒しになった車は運転席が上になっている状態で、頭から血を流した男がハンドルに腕を絡ませ動かなくなっているのが見えた。
そして、下になった助手席にも誰かがいることに気づき、オレはそっとポケットからスマホを取り出しライトを点け中を照らし、驚きに目を見開いた。
「……そんな、嘘だろ?」
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