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「で、結局は協会が匿っているということなのか?」
「その可能性もあるよね。もちろん限られた人しか知らないでしょうし、表向きはあの『異形の化物』を追うのに注力してるでしょうけど。そうして優秀な術者をかばいつつ、自分たちの手柄にすることを画策してるのでしょうね」
「なるほど。――今の男は知っていそうだったが」
マースラは簡単に経緯を説明する。
「その、疑わしい男の『能力』を奪ったらしいからね。その後どうしたか――用済みになったか、そんなところじゃない?」
「そんなものか」
マースラがもう一度肩を軽く上げる。
小骨通りはとても細い筋で、二人並んで歩くのも難しいくらいの幅しかない。
それにも増してごみや汚物で狭い路地をいっそうせばめ、悪臭と季砂靄で空気全体が淀んで見える。
ヴァダーとマースラが路地に入ってすぐにその店はあった。
廃墟と区別のつかないくらい廃れたその店は何とか判別できる看板に『金狒亭』とあったが――スタラナーの言っていた通り、営業している様子はない。
「これか」
「そのようね」
周囲は辛うじて廃業はしていないか、人の住まいのようだったりと、他に話に合いそうな場所はないようだった。
店を辛うじてふさいでいる扉にヴァダーが手をかける。
鍵も壊れているかかかっていないようで、ヴァダーが押すとあっさりと動いた。
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