アイツが来る

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あぁ、暑い。 俺は春。春なのに。 最近、暑くてたまらない。 毎年毎年、一年毎に、気温が高くなって困るんだ。 真夏日なんて、まるで夏みたいに。 だから夏が嫌い。熱いから。 夏は 嫌いだ。 だって俺は、『春』だから ……!! 「暖かくて、少しずつ俺を意識してくれるようになった春が大好きだよ。」 あつい…夏の熱さが、言葉と一緒に俺の中に入ってくる…! このままじゃ俺、異常気象になっちゃう!! あつさで混乱する俺に気づき、夏は耳もとで囁いた。 「春、大丈夫。もう夏だから、お前が熱くなっても誰にもバレない。」 「え…バレない?」 うん、と、夏は言った。 「だって、俺が来た!暑い俺が!だから誰も春が熱くなったなんて気づかない!」 そうか、もう季節は 夏。 夏が 来た! あつくなっても… いいんだ! そう思った瞬間、俺の体は夏と同じ暑さになった。 まるで一つに溶けたみたいだ。 「あ、あつい…、夏…っ、あついよ…」 これが、夏? 俺が思ってたより凄く暑くて、 凄く…熱い…っ!! 「春、かわいい。俺の春。」 毎年暑くなる春と、夏。 そして今年、とうとう夏に捕まった春。 来年の春は、さらに気温が上がりそうだ。 end
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