アイツが来る

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「よっ!久しぶりだな♪春~!」 「げっ!夏!?もう来たのかよ!?」 俺は春。 春一番の風を操り、桜の芽吹きを司る男。 それが俺だ。 「今年は梅雨がやる気ねぇみたいだな~。でもそのお陰で春に早く会えて嬉しいぜ♪」 そうなんだ。梅雨は雨を支配する男。 アイツは暗くて頑固で、自分が決めた時期は何がなんでも帰らない。 夏は梅雨を嫌っているから、梅雨がいる限り夏は俺に近寄れない。だけど今年は、梅雨が来たと思ったらすぐに帰ってしまった。 早足の梅雨に行かないでとすがったら、アイツは 「今年は仕事早く終わらせて、オフに雪とゆっくりするって決めたから。」 と、今までに見たこともない笑顔でスキップして去っていった。 アイツ、スキップなんてできたんだ…。 花を散らして去っていく後ろ姿を呆然と見ていたら、夏はすぐにやって来たんだ。
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