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「毎年毎年しつこいぞ!」
「またまた~!ほんとは俺のこと待ってたくせに~。」
夏は嫌いだ。暑いし。
無駄に明るいし。
「待ってない!お前が来たなら交代だ!俺は帰るから!」
「え~!?今会ったばっかじゃん!もうちょっと居てもいいじゃん!むしろずっと居ればいいじゃん♪」
いつからか夏はこんな風にヘラヘラ笑って、本気か嘘かも分からないような調子でベタベタしてくるようになった。
前はこんなに熱くなかった。交代の時期は春の俺と変わらないくらいの温度で、「交代~♪」って言いながらハイタッチするくらいだったのに。
「離せよ!」
俺がそう叫ぶと、夏が逃げようとする俺の腕をつかむ。
「待てって春!」
夏の手が熱い。
軽くハイタッチしてたあの頃とは、全然違う。
「春!俺、本当にお前が好きなんだ!」
ぐいっと引き寄せられ、俺は夏に抱き締められた。
「夏!暑い!やめ…!」
触れた夏の体が熱い。これ以上夏といたら、俺は春でいられなくなりそうで、きつく抱く夏を振りほどこうとした。でも…
「春だって!俺が本気だって気づいてただろ?毎年春に早く会いたくて、予定より早く会いに来てたからな。」
夏の鼓動が聞こえる。
それはとても早くて、それに気づいた俺の鼓動も早くなった。
「気持ちと同じように気温も高くなっていったし。それに、春だって…」
!!
夏が何を言おうとしているのか。
俺は知っていた。
だって自分のことだ。分かってる。
俺だって本当は分かってたんだ。
だけど、それを認めたら…俺はもう…
「春なのに、『真夏日』…って、」
俺はもう、『春』じゃいられなくなってしまう。
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