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眼前に広がる見渡す限りの草原を見て、剣と魔法の匂いを感じた。
涼しく心地の良い風と、真上から照らされる暖かな日差しに不思議と胸が高鳴った。
そして、隣にいる黒髪長髪のゴスロリ少女は日差しが気になるのか、おもむろに日傘を差した。
新しい世界に来たというのに、不安を感じる事がないのは彼女がいるおかげかもしれない。
俺は彼女を大切にしようと静かに決意した。
草原のど真ん中で突っ立っている訳にもいかないので、遠くに見える山とは逆方向に歩く事にした。
逆を選んだのは単純で、街を目指したいのだが山まで歩く道中に、街が無ければ心が折れそうだからだ。
道中、自分の服装や持ち物の確認を忘れていた為、確認をした。
服装は、白い縁取りのされた紺色のブレザーだった。
どうやら俺は学生だったらしい。
ブレザーのポケットには手帳型のカバーがされた携帯──スマートフォンとハンカチが入っていた。
携帯が使えるのか、念の為にカバーを開き確認してみるも、もちろん圏外。
しかし、カバーの内側には鏡があった。
鏡には、黒髪で長髪の青年が写っていた。
髪は整髪料を使わずとも重力に逆らっている。
目は大きく少しだけ釣り上がっていた。
自身の顔つきを確認した所で、持ち物の確認に戻る。
肩に掛けられている紺色のスクールバッグには、タオルとライターに財布とお箸が入っていた。
この持ち物で何をする気だったのかはさておき、ライターがあるのはありがたかった。
──と、確認を終えると同時に魔物と遭遇する。
熊とライオンを足して二で割ったような、そんな魔物だった。
その魔物との距離は五十メートル程で、何かを食している様子だ。
隣で日傘を右手に、突っ立つ少女を見て考える。
人型である以上その強さは些か怪しい
同期の中では龍なんてものもいた。
人型の彼女が龍に勝つとは到底思えない。
龍が当たりならば彼女は外れになるのではと思ってしまう。
しかし、彼女の純真さを見ていると、とても外れとは思えない程に癒される。
この際戦力は度外視してしまっても良いのではないかと思えてくる。
謎の空間から解散した後、一緒に行動するという面で見れば人型の彼女は間違いなく当たりなのだ。
龍と一緒に街中を歩き回る訳にはいかないからな。
熟考の末、俺は彼女を魔物と戦わせる事にした。
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