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元の世界で学生をしていた事を考えれば、俺の戦力は皆無だ。
これからの旅において、彼女の戦力を知る事は重要な事なのだ。
「危ないと思ったら戻って来いよ」
その言葉に対して、彼女は静かに頷く。
そして、彼女は自分の三倍は背丈のあるライオンのような、熊のような魔物に向かって歩いた。
彼女が近付くにつれて、魔物は警戒したように構える。
彼女が魔物との距離を十メートル程の距離に迫った頃、魔物が彼女に向かって走り出す。
それに対して彼女は、ゆっくりと左手を前に差し出すと同時に黒いモヤのような、モザイクのようなものを放出し、それを横薙ぎに一閃した。
その間僅か一秒。
相手は真っ二つに分かれ、絶命した。
それと同時に、とんでもない勘違いしていた事に気付かされる。
彼女は容姿や癒しだけでなく、戦力においてもズバ抜けて当たりだったのだ。
魔物を倒し終えた彼女はこちらに振り返り笑顔で手を振った。
俺は緊張していたのだろう。
自然と安堵のため息をついていた。
この小学生くらいの少女に戦闘させなくてはいけなくなった事の発端は、三時間程前の神様の話が原因だ。
──三時間前。
目を開けると、豪奢な椅子に腰掛けている初老の男性が目に入る。
目を開く以前の事は思い出せない。
しかし自らの記憶よりも目の前の男性が気になって仕方がなかった。
──君達は死んだ。
と、ふいに告げた男性。
その言葉と同時に、俺は意識を覚醒させた。
鮮明に周囲を見渡す事が出来るようになり、状況を整理する。
部屋は明るく、城の謁見の間のような印象を受ける。
とても死んだ後に来るべき天国や地獄のような場所には思えない。
そして、目の前には初老の男性。
初老の男性を挟むように護衛が二人、どちらも男性で椅子に座った初老の男性よりも小さい男性と逆に二メートルは超えるであろう長身の男性である。
そして、俺は一番右に立たされていた。
左側には黒髪の落ち着いた印象がある二十代半ばの男性、次にこちらも落ち着いた印象の短髪1十代後半の女性、そして女子高生くらいの年齢の長髪の女性、最後に猿が順に並んでいた。
猿はこの場において途轍もなく浮いている。
しかしながら、突っ込むよりも他に考えるべき事が多過ぎた。
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