193人が本棚に入れています
本棚に追加
「どうやら、一通りの気持ちの整理は済んだようだな」
と、初老の男性が呟くように言う。
いや、気持ちの整理も何も記憶がないのですが?
それは俺だけなのだろうか。
そんな疑問を知ってか知らずか初老の男性は続ける。
「まずは状況の説明をしようか。君達は死んだ。そして、ここは次元の狭間だ。君達は極めて珍しい魂の色を持っていた。だから、厳選の結果、私がこの部屋に君達を召喚した。可能性を見込んでな」
「可能性とは何です? そしてあなたは何者?」
初老の男性の言葉に返したのは驚くべき事に猿だった。
「順が変わるが、私は有り体に言えば神様だ。そして、君達はその見習いといったところか。とは言え、神様になるだけが君達の選択肢ではないし、君達の皆が神様になれるわけではない。そう、神様になれる可能性を秘めているということだ。それと、丁寧に説明したいところではあるが、私もそう暇ではないのだ。ここからは君達のするべき事について説明しよう。まずは──」
それからも、初老の男性──神様の話は長々と続いた。
体感時間二、三時間くらいの校長先生もおっかなびっくりの長話だ。
しかし、校長先生の話とは違い、どれも必要な話で、全てを覚えられるか心配な程に濃密な説明だった。
端的にまとめると、重要な事は四点あった。
一つは、この場で説明を受けている四人と一匹は、どうやら言葉や知識は覚えているが、生前の記憶はないらしい。
神様の見習いとして、必要な事と必要でない事を分けた結果のようだ。
そして、俺達はどうやら別々の世界に行く事で修行期間のようなものを積むらしい。
見習いは、俺達以外にも存在して、これからも増えていくようだ。
見習い同士が同じ世界で争い合う事はまずないらしいが、ランダムで飛ばされる為、もしかしたら争う事もあるかもしれない。
最初のコメントを投稿しよう!