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「いい加減諦めてくれない?」
「諦めるわけ無いでしょうが!」
私は目の前にいる男にそう怒鳴る。
男はため息の後、首を横に振る。
「悪いけど、僕は本を返す気はない。集中できないから帰ってほしいんだけど、戦乙女さん?」
数日前、封印されていたはずの魔導書のうちの一つ、[翡翠の書]が盗まれた。
厳重に守られた魔導書が盗まれたとあって、私のいる王国兵団は大慌てでその所在と犯人を探した。
そして、入り口付近に仕掛けてあった追跡魔法をもとに、犯人を割り出したのだ。
しかし、もう一つ謎があった。
「そうはいかないわ。いくらあなたが著者だとしても、王国との話し合いでその危険性は理解しているはずよ。」
この男こそ、翡翠の書の著者なのだ。
なぜ自分の書いた魔導書を盗んだのかもわからなかったが、どちらにせよこのままというわけにはいかない。
「理解しているとも。だからこそ必要だったんだよ。まったく、君のお父さんは頭が固くてね。こんな形になっただけさ。」
「どういう意味かしら?自分は正しいとでも言うつもり?」
「間違っているから盗んだんだよ。」
先程から話が噛み合わない。私の苛立ちを他所に、彼は私に背中を向け、机に向かう。
「ふざけないで!いいから魔導書を返しなさい!国家反逆で殺されたいの!?この前だって大爆発起こして何のつもり!?」
「あーもううるさいな!ちょっと黙ってて![ゲージ・オブ・スフィア]!」
彼がこちらに手を向け、魔法を放った瞬間、私の足元にあったガラスの玉が光だし、私はその中へと吸い込まれた。
「痛っ!」
お尻を強く打ち、私はそこをさする。
『はぁ………終わったら出してあげるから、待っててよ。』
「ちょっと!出しなさいよ!おい!無視すんな!!」
どれだけ大声を出しても彼は耳を傾けることはなかった。おそらく中の音は外に聞こえないのだろう。
出る方法もわからず、私はとりあえず周りを見渡した。
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