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周りには大量の本が入った本棚と、机があった。
本棚から本を取り出すと、そこにはびっしりと魔法の構造式や複雑な術式が書かれていた。
他の本も同じようなものであり、どうやらここは彼の研究所のようだ。
「すごい………こんな複雑なものまで………って五重魔法陣!?そんなまさか………!?」
常人ではたどり着けない領域、彼は魔導書の著者であると改めて思い知らされた。
本を戻し、今度は机に近づく。机には、本が一冊とそれ以外は羽ペンとインクだけだった。
本を開くと、日付とその日の感想のようなものが書かれている。
「日記………。」
私は日記をめくる。日記の最初は魔導書を作り始めるところからだった。
【X月Y日 本を書こうと思う。これまで僕が作り上げてきた魔法のすべてを記そうと思う。一度でいいからやばい魔法だけを集めた本っていうのを作ってみたかったんだよね。】
ど、動機が危険すぎる!
いや、確かに魔導書は強力な魔法が多いと聞いたけど!まさかそんな理由で魔法選ばれてたの!?
【X月Z日 紙が足りない。お金もないので、専門である風の魔法に特化したものを作ろうと思う。炎の魔法だけ集めた本を作ると息巻いていた友人もいたことだし、ちょうどいいと思う。っと、写す時に術式のミスがあったから後で直さなきゃ。】
「風魔法………翡翠の書だなんて、すごい偶然ね。」
魔法には色がある。炎は赤、水は白、土は黄色、風は緑だ。
そして、この街で取れる宝石である翡翠は深緑。何たる偶然だろうか。
私は次のページをめくる。
【Y月A日 あ、そうだ!本の名前は翡翠の書にしよう!風魔法集めたし、ちょうど翡翠っていう深緑の宝石がこの街では有名だし!】
「お前が名付けたんかい!」
思わず叫んでしまった。偶然ではなく、安直だった。
しかも、読んでいくとその話を他の魔導書の著者と話していて、他の著者も宝石の名前を魔導書の名前にしたと書かれていた。
「なんかもう少し深い意味があると思ってた………嘘でしょ………。」
だんだんと魔導書のイメージが下がっていく気がした。
崇高な目的の下、選ばれた魔導師によって作られた………のではなく、魔導師のレポートでしかなかったのだ。
脱力感を味わいながらも日記を読み進める。
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