空模様、恋模様

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街路樹の隙間から、雨が零れて来る。 降り出して来たかと舌打ちして、速足で会社を目指した。革靴が雨音より煩く響いてる。 10月に入ったこの季節は、安定しない天気が続いてる。 会社の前のこの道は、通勤時間だというのに行きかう人は多くない。真っ直ぐ走って会社ビルの前にある数段しかない段を飛び越すと、すぐに玄関口の屋根がある場所へ辿り着いた。 そのまま自動ドアの方へ進もうとした時、小走りで駆けて来る女性が目の端に映りこんだ。それが誰なのかすぐにわかった。 歩みを止めてポケットからハンカチを取り出し、水滴を落とすようにスーツを軽く叩く。そんな事をしながら彼女が来るのを待ってると、小走りで飛び込んでくる姿。 会社の先輩である佐藤曜子(さとうようこ)で間違いなかった。 「鵜飼(うかい)君おはよう! 急に降られちゃったね」 「おはようございます。もうちょっと天気は持つと思ったんですけどね」 「だよね」 彼女も鞄からハンカチを取り出し、体を軽く拭きつつ歩みを進める。それに合わせながら並んで歩くと、すぐにエレベーター前に辿り着いた。
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