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「じゃあ、また明日」
「ばいばーい」
萌達とアイスクリーム屋の前で別れる。
彼女達が歩き出したのを確認して、みっちょんと二人歩き出す。
「美味しかったね」
「女子向きって感じの店だったわよね」
「また来よう」
「ふっ、そうね」
頷いたみっちょんに笑みを浮かべ、両手で掴んだ学生鞄の取っ手をキュッと握った。
帰宅途中の学生や買い物帰りの主婦達とすれ違いながら自宅への道を進む。
住宅地に近づくに連れて減っていく通行人。
「それにしても、今日は大変だっだわね」
苦笑いを浮かべたみっちょんに、
「本当。お母さんももう少し考えてほしいよ」
と疲れた顔で頷く。
学校で高虎にお弁当を渡すとか、どんな試練だよ。
「まぁ、おばさんは鈴子と芹沢君に昔の様に仲良くしてほしいんでしょうけどね」
そう言って肩を竦めたみっちょん。
「それはそうだろうけど、そんなの無理に決まってるじゃん」
女ったらしの高虎と関わるなんて、とんでもないよ。
小学生の時よりも、女子の反感買うに決まってるし。
「芹沢君もあの頃と違って強くなったから鈴子を守るんじゃない?」
「守るったって限度があるじゃない。第一、今更あいつに守ってもらおうなんて思ってない」声を強張らせてそう言って。視線を遠くへと向ける。
「確かにね。年頃の女子の陰湿さは陰ではっきりされるものね。表面上は守られたとしても、何らかの嫌がらせは受けわよね」
「でしょ? もうそんなの懲り懲りよ」
散々嫌な思いさせられたんだからね。
あいつが幼馴染なんて、本当呪いだよ。
高虎がうちに来てるなんて、絶対にバレないようにしないといけないわ。
「芹沢君は本当何を考えてるのかしらね」
顎に手を当て首を傾げるとみっちょんは思いふけるようにそう呟いた。
「何にも考えてないんじゃない」
じゃないとあんな風に遊び歩いたりしてないでしょう。
目尻を釣り上げ正面を睨みつけた。
「本当に手に入れたい物を見誤るなんて、馬鹿よねぇ。何時も見つめてるものは一つなのに」
みっちょんの呟きは、突然鳴り出したパトカーのサイレンの音にかき消される。
「えっ?」
なんて言ったのか分からずに聞き返した私の目の前を、赤い回転灯を回したパトカーが走り抜けていった。
大通りの抜け、路地へと入るとコンビニの前に屯する数人のガラの悪い学生達か目についた。
なんだか嫌な予感が頭を過る。
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