昨日の敵は今日も敵!

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ラブラブしてる両親を尻目にとっとと朝食を済ませて席を立つ。 「ごちそうさま」 「あら、鈴ちゃん、もう食べたの」 驚いた表情で私を見た母親に頷いて歩き出した。 「鈴子、早食いは良くないぞ」 と言う父親に、 「しっかり噛んで食べたよ」 振り返りそう返す。 二人がイチャついてる間に食べたっていうの。 全く時間を忘れてイチャついてた癖に何を言うんだ。 やっかみ混じりに心の中で苦情を呟いて、胡乱な目を向ける。 「そ、そうか。なら問題ないな」 私の視線の意味を理解したらしい父親は、ぎこちない笑みを浮かべた。 まぁ、夫婦仲が悪いよりは良い方が良いんだけどね。 出来れば娘の前では自重してほしいよ。 微妙な空気になったけど、それを気にすることも無く私は今度こそリビングを出る為に歩き出した。 歯磨きして、学校に行こう。 私が居なくなった後はお好きなようにラブラブしてくださいな。 フッと口元を緩めた。    支度を整えて、学生鞄を持ち玄関に向かうと、履きなれた靴に足を通した。 「行ってきます」 少し大きめの声でそう言うと、いつも母親がお弁当を置いてくれてるアンティーク調の靴箱の上に目を向ける。 そして、気付く。 いつもよりもお弁当が多いという事に。 私専用のピンク色のお弁当の巾着袋の横に、ブルーの巾着袋が鎮座してる。 なんだこれ? お父さんが出張に持ってくのかな。 それにしては、若者向けのデザインのような気がする。 仲良く並ぶそれに、嫌悪感が走った。 「まぁ、いっか」 直ぐに興味を無くして、自分のお弁当を手に取った。 「鈴ちゃん、ちょっと待って」 と言う声と共にパタパタとスリッパの音が背後から近づいてくる。 「何?」 振り返ると満面の笑みを浮かべた母親が走って来た。 その表情に凄く嫌な予感がした。 こう言う顔の時のお母さんは、ろくでもない事をよく言い出すんだよね。 「鈴ちゃん、高虎君にもお弁当を持っていってあげて」 ほら、ろくでもない。 どんな試練よ、それ。 「えっ? 嫌」 眉間のシワが深まったのは仕方ないと思う。 「んもう! またそんな意地悪いって」 拗ねたように頬をふくらませる母親にうんざりとした目を向ける。 どうして私が、高虎のお弁当なんか持ってかなきゃならないんだ。 学校で奴に接触するなんて、自爆するようなもんでしょう。 お弁当なんか手渡した日には、高虎の取り巻き達にどんな目を向けられるか分かったもんじゃない。
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