昨日の敵は今日も敵!

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「そんな事言わないで、はい」 満面笑みを浮かべて水色の巾着袋を差し出してくる母親に最大に嫌な顔をする。 「本当、無理」 勘弁してよ。 こっちから、わざわざ高虎に近づく状況を作るなんてありえない。 「高君、今朝は朝ご飯も食べてないじゃない? お昼はしっかり食べないとだし」 困り顔で私を見るのは止めて、私が悪者みたいじゃないか。 「そんなのあいつの勝手じゃない」 夜遊びして、朝ご飯を食べに来なかった高虎が悪いんじゃない。 そのせいで私がとばっちり受けるのは違うと思う。 「お母さん、マリアから頼まれてるんだもの。お願い、渡してあげて」 強引にお弁当を押し付けてきた。 普段、大人しそうな母親はこういう時、どうにも強引になる。 本当、マジで勘弁してよ。 受け取るつもりもないのに、強引に押し付けられて受け取る形になったそれを憎々しげに睨む。 「そんな顔しないの。せっかくの可愛い顔が台無しよ」 「・・・」 台無しにしたのは一体誰よ! 「高君とはお隣りどおしの幼馴染なんだから仲良くしないと駄目よ」 そう言い聞かせる母親にうんざりとした表情で大袈裟な溜め息をつく。 その言葉何回も聞いてるし。 あいつと仲良くして良い事があった事なんて一度もないのに。 「高虎に関わって私が酷い目にあったのお母さん覚えてないの」 あの時は小学校に呼ばれたりしてたでしょう。 忘れたとは言わせないからね。 「そ、それは高君が悪いわけじゃ」 言葉に詰まった母親に皿に畳み掛ける。 「確かに高虎が悪い訳じゃないけど、あいつの八方美人な性格のせいじゃないよ」 「うっ・・・でもね、ほら皆大きくなったし、小学校みたいな事にはならないと思うの」 「大きくなった分質が悪くなってるわよ」 「鈴ちゃん」 目を潤ませる母親。 そんな愁傷な顔したって駄目なんだからね。 「玄関で何を揉めてるんだ?」 父親がリビングからやってきた。 チッ、お母さんの味方が増えたじゃん。 「あなた・・・鈴ちゃんが高君にお弁当を持っていくの嫌がってるのよ」 困ったわと自分の横に並んだ父親を見上げる母親。 「高校でも高虎は周囲にハーレムを築いてるの! だから、お弁当なんて渡す機会ないよ」 父親の顔を見て訴える。 本当、自殺行為なんだってば! 「そ、そうか。彼はいい男だから周りが放って置かないんだろうな」 私の言葉に複雑そうに眉を寄せた父親。
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