昨日の敵は今日も敵!

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「そうなの。だから近付くチャンスはない」 お願いお父さん、分かって! 願いを込めて父親を見上げる。 「お弁当、せっかく作ったのに」 ぼそりと寂しそうに言う母親に心が痛まない訳じゃないけど、私は平和な高校生活を守りたい。 父親は母親の表情に困った様に眉を寄せ、私の方へと再び視線を戻す。 「鈴子、咲の気持ちを無駄にするのは可哀想だから、お弁当を持っていってやってくれないか?」 もう! お父さん、お母さんに甘すぎる。 「・・・」 「手渡さなくても机に置いておくだけで良いから、頼む」 父親の言葉に辟易した様に溜め息を漏らす。 駄目だ、もうこの家には味方がいないわ。 このまま玄関で押し問答してても、時間だけが過ぎていく。 「分かったよ。持っていけばいいんでしょ! 持っていけば」 投げやりにそう言って二人に背を向けた。 「鈴ちゃん、ありがとう。やっぱり鈴ちゃんは優しい子ね」 嬉しそうな母親の声が背中に届く。 「鈴子、もし嫌がらせをする奴が出てきたら返り討ちにしても良いからな。お父さんが許す」 父親のそんな言葉にやれやれと肩を竦めて玄関を押し開けた。 「行ってきます」 ぶっきらぼうにそう口にして外に飛び出せば、憎らしい程晴れ渡った空が視界に映った。 はぁ、私の気持ちとは裏腹じゃないか。 もう、色々どうでもいい! 投げやりな気持ちのまま、2つのお弁当を手に私は駆け出した。 「で、そんな陰気臭い顔してるのは、それのせい?」 みっちょんが肩を竦め、私の持つ水色の巾着袋をちらりと見た。 いつもの待ち合わせ場所でみっちょんと合流したあと、朝から私を襲った不幸な出来事を語って聞かせた。 それは必死に。 ちっと、みっちょんが引くぐらいの勢いで語った自覚はある。 「そうなんだよ。これが呪いの袋」 もはや弁当と呼ぶ気も起きない。 「咲ちゃんも罪作りな事するわねぇ」 少し間延びした様にそう言い、やれやれと首を左右に振ったみっちょん。 ちなみに、うちの母親とは「みっちょん」「咲ちゃん」と呼び合うぐらいに仲良しである。
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