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私だって、高虎自身を嫌いなわけじゃないけど、今更仲良くしたいだなんて思えない。
昔の様に巻き込まれて嫌な思いをするのはごめんだから。
あいつにとって親切な女の子達は、私にとって敵にしかなりえないんだよね。
「芹沢君の八方美人ぷりが、周囲の女達を助長させるって事を鑑みないだめよね。鈴子を狙ってくる連中は浅はかなバカばっかりなんだから」
「本当に」
みっちょんの言葉にしみじみと同調する。
「でも・・・まぁ、芹沢君が自分の物にならないからって、親しい存在の鈴子を排除しようとする事自体間違ってるんだけど」
露骨に不快な表情を見せたみっちょんの周りに黒いオーラが滲み出てる様な気がする。
彼女は私がとばっちりで酷い目にあったのを側で見てきた。
そして、その度に自分の事のように怒ってくれたんだ。
「そもそもそこに気付ける女の子達なら、ハーレム要員に加わらないと思うな」
と悟りを開いてそう言えば、
「それは言えてるわね」
みっちょんがクスリと笑いを漏らす。
「南方、堀口、おはよう」
聞こえてきた声に横を見ればクラスメートの男子が学生鞄を肩に担いで走ってくる所だった。
確か、佐藤くんだったような。
丸刈りで真面目な野球部です! と主張した容姿の彼は朝から爽やかだ。
「「おはよう」」
みっちょんの声がハモった。
顔を見合わせてクスクスと笑う私達に、佐藤君もニカっと笑うと、軽く手を上げ、
「じゃ、先行くな」
と校門に向かって走っていった。
「朝から、無駄に元気ね」
そう言うみっちょんの視線の先には、校門前に立つ教師も私達の時と同じ様に元気に挨拶する佐藤君の姿がある。
「あのテンションは、私にはないな」
朝からあんなに元気にはなれないな。
私、低血圧だし。
「彼って誰にでもあんな感じよね」
「裏表はなさそうだよね」
「無駄に熱くなきゃ良いやつなんだけど」
「良い人止まりで終わりそうなタイプでもある」
「芹沢君と足して二で割ったら程よくなりそうな気がするわね」
「プッ」
みっちょんの言葉に思わず吹き出した。
チャラ男と真面目君、確かに足して二で割ると程よくなるのかも知れないや。
「世の中ってうまく行かないのね」
そんなしみじみと言わなくても。
「ままならないのが世の中かも知れないよ」
みっちょんと無意味な会話をしつつ、私達はさっき佐藤君が通り抜けた校門を潜った。
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