思えば、このときが一番、平和だったかも……

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「ベランダも確認しろよ」 「心配性ですね」 と笑うと、 「だって、俺だってまだ、指一本触れてないのに。  窓の外に征が居たら嫌じゃないか」 「……やめてください」  本当に荒縄とか持って立ってそうで怖いんですけど……。  ベランダの暗がりに立ち、こちらを見ている征を思わず思い浮かべてしまったとき、 「すぐ帰る」 と囁いて、尊が口づけてきた。  ……なんかまだ、緊張するなあ、と思いながら、鈴は、 「あっ、じゃあっ、行きますっ」 と焦ったように言い、車を降りる。  振り返り、 「気をつけてくださいね。  急いで事故とかしないでくださいね」 と言うと、尊は、 「いいから、早く行け」 と言って、素っ気なく、手で、しっし、と払ってくる。  だが、それは、うっかり社宅の駐車場でキスしてしまった照れからのようだった。  鈴は急いで社宅の階段を駆け上がる。
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