思えば、このときが一番、平和だったかも……

6/15
前へ
/83ページ
次へ
   がっつり、丼など食べるつもりだったのだが。  入ったサービスエリアのちゃんぽんが、めちゃくちゃ美味しそうだったので、ちゃんぽんを食べてしまった。 「美味しかったです」  よく冷えた水を飲みながら、鈴が言うと、 「此処にしてよかったな。  『もう定食やめました』の店に入らなくて」 と尊が笑って言ってくる。  いや……、『もう』はついてませんよ。  そして、本当に見たんですよ、と思っていると、 「(しゅう)も此処のちゃんぽんが好きなんだ」 と尊は言い出す。  式場から逃亡した最初にお世話になった、車の整備工場の朝倉秀(あさくら しゅう)だ。  式にも来てくれていた。  あまり話す時間もなくて、尊は残念そうだったが。 「秀は、わざわざ、此処にちゃんぽんだけ食べに来て、引き返したりしているらしいぞ」 「そうなんですか」 と笑ったとき、尊のスマホが鳴り出した。  それを見た尊が眉をひそめる。
/83ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2124人が本棚に入れています
本棚に追加