思えば、このときが一番、平和だったかも……

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 鈴がサービスエリアや道の駅に寄るたび、ソフトクリームやジェラートをチェックしているからだろう。 「いえ、大丈夫ですよ。  もう遅い時間だから、食べないですし」  ……太るから、というところは飲み込んで言い、車に乗り込む。 「そういえば、高校野球のシーズンですね」  そう走り出した車の中で言って、 「どうした、唐突に」 と言われてしまう。  いえ、さっき、ニュースで甲子園やってたからです、と思いながら、鈴は言った。 「去年の夏、私がキッチンでカルピス作ってたら、テレビ見てたお母さんが、 『今、人間たちの夏は終わったって言った?』  って訊いてきたんですよ。  SFでも見てんのかな、と思って、画面を見たら、高校野球やってたんですよ」 「どんな聞き間違いだ……」 「すごい上から目線なナレーションだなあ、って思ったんですが。  そういえば、カルピス入れてた私の耳にも、ナレーション聞こえてたんですよ。 『キュウリたちの夏』って」 「球児だろ」  親子で耳掃除して来い、とか言われたりしているうちに、博多に着いた。
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