第二章 封鎖農園

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 騎馬突撃専用槍であるランスではないが、それを兼ねるように吟味した槍のカシの柄が半ばほどから折れ曲ったのだ。神聖馬に跨った騎士の分厚い甲冑相手ならば頷けるが、通常の騎士の鎧相手なら板金部分でも貫けたはずの一撃だったのだが。  予想外の結果に呆然として次への動作が遅れたスローンが槍を捨てサーベルを抜くまでに距離を詰めたサナダは剣に馬速を加えて喉元を払った。 一撃を耐えたスローンだったが、続けてバックハンドで後頭部を強打され馬上から滑り落るように草の上に横になる。  サナダは周囲を見渡した。  衆目を引いていた一騎打ちが終わると徒の兵士達は俄然と浮き足だつ。避難民の反応は薄かったが、その意思が折れるようなことは起らなかった。  結果、阻止線は引き裂かれ、自らの数倍の数の避難民の中で兵士達は右往左往していた。  一騎残った騎兵は怯えを見せながらも落馬したスローンへ近寄って行く。革鎧を着た彼はスローンの従者なのだろう、サナダを伺いつつ下馬して動かないスローンの両脇の下から両腕を回し入れて向うへと引き摺っていった。  傾き動かなくなっていた荷車は水平に直され頭を下げる男を無視するようにラーデンが幼子の両脇に手を差し入れて荷台へと上げてやっている。  避難民の背後で立ちつくす兵士を馬上から威圧するサナダへ、丘の上からヴィヴィアンのあやつる馬車が下りてくる。     
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