第二章 封鎖農園

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「計画とはだいぶ違うようじゃが、大丈夫か。双方から中立の立場で交渉する予定が、双方から疎まれるぞ。」 「彼等を見捨てていたら、後でどんな大義を掲げてもこの場の誰も本気にしてくれないよ。」 「そうじゃな。だとしたら決断が遅かったな。そちと旧知らしい復古派の騎士が挨拶に来た時点で彼に告げるべきだったな。『義によりて彼等に助成する』と。」 とヴィヴィアンは返事を待たずに馬車を進めた。  サナダは面貌を顔に当てたが、装着するのはやめて少々不機嫌な顔を晒した。  復古派の阻止を振り切った避難民だが、では農園が諸手を挙げて歓迎してくれるかと言うとそんな訳はない。壮年の男子が義勇兵として駆け付けたというのなら別だが、住居を追われた人々を保護する積極的な理由を農園は持っていなかった。  運河の末端に位置するセント・ラーデン集積所は皇帝直轄地で代官が統治していた。その代官もこの騒動で帝都に郎党を連れて帰ったきり連絡が絶えた。その後は代官の指示に従って実際に業務に携わった者が連携して機能を維持してきている。  主を失なった農園の多くが復古派に同調して飲み込まれるか自壊していく中、聖者農園は流通に携わる教育された人材に恵まれていた為だろう、自律的にまだ機能している。     
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