第二章 封鎖農園

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「彼女はそう・、見た目どおりに見ない方が良い。彼女が産まれると言うならもう産まれるのだろうし、馬車にと言うならそうした方が良いぞ。」 とサナダが馬を寄せながら言い、ヴィヴィアンへ目配せした。  その言葉に呆然とした男を一瞬見たヴィヴィアンだが、馬車を降りると荷車に寄って幼子に声を掛けながら妊婦が馬車へ移るのに手を貸した。馬車の幌の出入口を遮る垂れ幕を下しぎわに、 「中に人を入れられなくとも手助けぐらいはできよう、目前で人死が出たら目覚めが悪いぞ。」 と門番を脅し、水や火の用意を命じた。門番の二人は一瞬顔を見合せたが、すぐ一人が駆けて行った。  男はジンベエという名前を名乗ったきり、馬車の前を行ったり来たり・座り込んで頭を抱えたと思うと突然立ち上がったりするだけだった。  農園の門が閉ざされていると知ると避難民達は出丸の周囲に脱力したように座り込んでしまった。  馬車から追い出された小狐がラーデンの乗馬へと避難民の間を駆け抜けて行く。ラーデンは鞍から左へ身を乗り出しつつ体を下げて手を延し、小狐を掬い上げた。  上着の中に潜り込み、顔だけ出した小狐の顔を撫でながらラーデンはサナダへ、 「まあ目立つ怪我人も無く突破できたようだな。」 「ああ、俺が一騎打にかまけている間、貴方が兵を抑えていてくれてお陰だ。」     
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