第三章 志願者

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 それに比較して避難民のこの静かな反応は予想外だった。  農園内への出口を塞ぐ出丸を背景に、門番の視線を感じながらサナダは次の言葉を探っていた。農園の広場での募集では、これから先は罵声と嘲笑でこれ以上の話はしなかった。ここでも同様に無駄に終わるのではないかという気がしていて言葉を考えていなかった。 「・なあ、あんたの話にのるのとのらないんじゃどう違うんだい。俺ら武器持ってここを守るんだろ。その隊長があんただと聞いたんだが。」 「俺は別にあなたがたの隊長になった訳じゃない。唯、こんなことには慣れていないだろうから助言はしてくれとは言われている。・・後で言おうと思ったけどこのまま剥き出しじゃ不味い。杭を打って簡単な柵ぐらいは直ぐに作ろう。丸太とか槌は手配してるから、槍なんかといっしょに直に届くよ。」 「・とは言ってもあんたの指示におれらは従うんだろう。何が違うんだ。」 「俺はあんたらに助言するだけだよ、指示じゃない。柵の設置はすぐしないと本当に不味いし、あんたらも落ち着いていないようだったので先に手配しただけだ。」  サナダは周囲をぐるりと睨むよう見みた。ヴィヴィアンは馬車の中で妊婦に付き添っているし、ラーデンには周辺の様子を見てもらっていてここには居ない。一度大きく息を吸い、 「俺の兵士になったら、命令には従ってもらう。給金は一ヶ月で銀貨二枚、衣食武器鎧は支給する。 戦いの無い時にもそれに備えて教練を行う。これも命令、強制だ。」  傭兵なら月に金貨数枚、戦闘時以外は朝夕の点呼時に上手く員数合せさえすれば行動を煩く言われることもない。 「傭兵になった方がましだと思たかもしれないが、その代わり俺が領主になったら全員に自立できる農地を与える。それだけの土地が無くても面倒は見る。最後まで一蓮托生だ。」  年若いものは納得と希望を込めた視線をサナダへと向けたが、 年のいった者は訝しがな疑いの混った様子に戸惑い躊躇していた。  互いの顔色を伺う一瞬の沈黙の中、向うから突然赤ん坊の泣き声が聞こえてきた。目を見開いたジンベエが馬車の方へと駆けて行き、途中で派手に転んだ。
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