第三章 志願者

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 年齢順に並んだ志願者は、少年が五人、中年男子が二人に女性が一人に白髪まじりの男が一人。  最年少らしい二人の少年は唯唯、ういういしいだけだが、どの上の三人はそれぞれ個性的だ。  少々拗ねたようなにきび面の少年は既に兜の緒を緩ませている。  その隣の線の細い少年がしきりにそれを改めさせようと肘で突いては自分の顎を指差している。  片袖口の無いシャツを着た少年は直向きに体を直立させている。  その左側の四人は既に若くはないが四名共に労働で酷使され、されることに慣れた体付きをしているので兵士として肉体的には不安は感じない。  自分に言い聞かせるような決意が先程の赤ん坊の父親の眼には宿り、隣の同世代の男には懐疑の影が見え隠れし、そして女には明確な憎しみの炎が燃えている。最後の最年長の男はそれを諦念の滲んだ眼で見ている。 「お頭!」とにきび面のジミーが右手を上げて呼び掛けてきたが、即隣のフレデリックが「隊長だ、」と小声で突っこまれきょとんとしていた。がすぐに、「隊長!」と言い直して右手を再度上げた。 弟のふりをした。  サナダが向き直ると、 「この鎧、何か軽くて頼り無いんですが。こんな鎧で戦えるんですか。槍の一突きで殺られちゃいそうなんでけど。」  ジミーとフレデリック、この二人だけが農園からの入隊希望者だ。  この鎧を着たサナダが復古派の重装騎兵を打ち倒すのを見ていた避難民はともかく、見たことのない軽い素材でできた鎧に自分の安全を託すのに不安を感じるのはもっともなことだ。避難民からの志願者も不安が無いわけではないだろう。  まずジミーに、兜の緒を締めるように注意した後、ラーデンに言付けを頼んだ。  志願者達へ最も基本的な軍隊的動作、休め・気をつけを指導中に、大きなマスケットを括り付けた鎧櫃を背負ってラーデンがヴィヴィアンを連れ戻ってきた。
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