第一章 野を行きて

2/12
前へ
/52ページ
次へ
 だとしたら何とも中途半端に思える。厚いプレートメールに身を包んだ重装騎兵のよう攻撃に耐えて突撃するには防御が不足で、軽騎兵のように戦域を駆け巡るわけにもいなないだろうに。  右前方の数百メートルの草叢から鳥の一斉に群飛ぶのを見た騎士は数十メートル先まで馬を走らせて、数瞬佇んだ後に踵を返した。 「騎兵が何騎か駆け来るようだ、道を空けよう、」 との声は若若しい。頬まで被るようなヘルメットのせいでしかとはしないが実際、二十を過ぎるかどうかだろう。  声をかけられた御者は、ポンチョのフードを下した。そこで露になった顔は騎士より更に若く銀髪の垂れる幼さの残る女顔。耳をすませてすぐに馬へ鞭をやって少し先の路肩の平坦な草地へと急がせた。  引き馬が路肩に出て、荷馬車も半ば道から逸れた時、最初の疾走する騎馬とすれ違った。  不完全とは言え道の片端によった荷馬車とすれ違うのに問題はないはずだ。しかし、その騎馬は引き馬の眼前ぎりぎりを駆け抜けた上で荷馬車を入れようとしていた草地へ出てその時何か、多分馬面に軽く鞭を入れたようだ。  大弓を背負った赤毛の騎手がニヤリと笑ったので故意に違いない。  吃驚した引き馬は踵を違え、道に戻る方向へと飛び退き、荷馬車は傾いて荷の一部が路上に投げ出された。     
/52ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加