第一章 野を行きて

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「ミューラーかボイラーかしらんが、お前をバラしてもこの先の信心深い奴等に知られる心配はなさそうだというのは分かった。荷は頂くぜ。そこの御者、女だろう。その面倒も見ようじゃないか。お前は安心してくたばるがいいさ。」  馬車を追い越していっていた四騎もいつの間にか戻ってきていて、騎士をとり囲む。 右手から半弓で射られた矢を嫌って騎士は顔を籠手で覆いながら左手で面頬を装着して、右手で抜刀する。 似たような意匠の革鎧姿の六騎、神聖帝国の鎧ではないので西域の小国か傭兵隊からの脱走兵だろう。二名が小さな弓、半弓を構えて牽制し、それなりに連携がとれた動きを見せている。  左前から一騎がサーベルを頭上から振り下した。騎士がそれを剣で払うのに合せて右後ろの一騎がサーベルで騎士の背中を突く。 「見掛けより硬いぞ、こいつの鎧。隙間を・」 と言いかけて口ごもる。この騎士の装着している黒い鎧は重装騎兵のプレートメール並に隙間がない。いやそれ以上かもしれない。通常のプレートメールなら何らかの間隙がある関節部にさえどうゆう仕組みなのかそれらしいものが見当らない。 「引き倒してしまえ!」  じりっとサーベルを構えた四騎がにじりよる。半弓を構えた一人が人質にでもするつもりだったのか、御者に手を延したところで悲鳴をあげた。御者の手には大振りのナイフ、それで抉られたのだろう。その男が「このアマ!」と矢をつがえるのを見た仲間が、     
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