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プロローグ
帝国年代記には偽りが記されることはない。
帝国年代記は栄光を記する為にあるのではなく、帝国の歩みをつまびらかにすることにある。歩みを省みて帝国の行く末を安らかなものにする為に記される。
それゆえに短かな一行にも厳密な裏付けと吟味がなされている。
帝国年代記には偽りが記されることはない。
しかし、その為に多くの事柄がこぼれ落ちざるを得ないのも事実である。
年代記を読み限りは独立不羈としか言いようのない人物が、義理と人情の間で悶々とする様をその双方の立場の人物が好意的に記している。そのような魅力溢れる資料は年代記には反映されていない。
以下は私の独り語りである。誤りや嘘さえ含まれているかもしれない。しかし、私はそれを書き留めざるを得なかったのだ。
帝国成立以前、大陸に覇をとなえていたいわゆる神聖帝国は慢性的な内乱状態にあるような国体であった。帝室はその忠誠を誓う領主たちにその領地の安堵を約束して神聖馬を約束したが、その領地を含めた諸権利の保全は領主の自助努力が求められた。
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