1年前

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 真っ白な百合を思わせる、美しい顔立ち。紺地に黄色の蝶々柄という、華やかながらも清楚な浴衣は、そんな彼女によく似合っている。ちなみに、僕はTシャツに半パンというラフな格好で、さらに隣にいる母は、すとんとしたシルエットのワンピース姿だ。外出する時によく着る服で、普段はしない化粧もしている。  母は手を振りながら笑った。 「決めても同じよ。固定場所をいくつも作っちゃうから。結局どこに置いたかわからなくなるもの。隆は昔からそう」 「ふふ。でも、さすがに自分が飲む薬は、きちんと管理してくれてます」 「そりゃあそうよ。いくらいい加減に生きている隆でも、身体がしんどくなるのは避けたいに決まっているもの」 「私、はじめは冗談かと思って」  過去の出来事がそこに浮かんでいるかのように、千咲さんは天井を見上げた。 「あぁ、糖尿病? そうよねぇ。隆は痩せ型だし。そもそも若い人が罹るイメージじゃないものねぇ」 「生活習慣が原因の場合と、隆君みたいに原因がはっきりしない場合と、2種類あるんですよね」 「そうそう。私も自分の息子がそう診断されるまで、ずっと知らなかったわぁ。自分の身に降りかかって初めて知ることって、大人になってもたくさんあるわよねぇ」  母はしみじみと言い、千咲さんも深く頷いた。 「まぁ、一生付き合うしかない病気ではあるけど、薬を決められた通りに服用していれば、日常生活に支障はないから」
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