黄昏の来訪者

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 僕の守護天使 《バクティ》は、青銀色の長い髪をまっすぐ背後に垂らした、ほとんど無色の肌と目をもつ青年の姿をしている(締まりのねぇ顔してやがるな、といつもロラン先輩に冷やかされるけど――《アヴァドゥータ》みたいに、角だの牙だの尻尾だの生やした漆黒の怪物よりは、よっぽどましだ)。守護天使は大きな水瓶を携えて、列を作って待っている病人たちのもとへ、ゆっくりと近づいていった。病人たちの先頭にいるのは、黎廃熱で皮膚がただれ、痛々しい赤みをさらけ出している老婆だ。  《バクティ》は水瓶を傾け、老婆の患部に水を注ぎかけた。老婆は心地よさげに目を細めた。 「おおっ……冷たくて気持ちがいい……いや……なんじゃ、これは……あたたかい……とろけるようじゃ。おおっ。おお、これは……!」  水の触れた部分から、老婆の皮膚が元の肌色を取り戻し始めている。  悲鳴に近い驚きの声が村人たちの口から漏れた。何人かがすばやく跪いて三根源(タラース)の印を切り、祈り始めた。
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