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 守ユイ(もりゆい)は飾り気のないスマートフォンを机の上に滑らせた。楽しんで進めていたゲームが、終盤に至ってどうにも思い通りにならなくなったからだ。  とある公立高校の放課後の教室である。  対面に座っている女子生徒が目を通していたファイルから顔をあげることなく、もうゲームやめてと云った。 「やめてる」  図書委員の集まりだ。  守ユイは図書委員長、向かいに座る神前るるる(かんざきるるる)は副委員長だ。来期に補充申請する図書に就いて話をしていたところだった。  るるるはそこでファイルを閉じ、小さなため息を落とした。  肩に届かない程度の栗色の癖毛。色白の肌に右頬にあるほくろがアクセントとなっている。その辺の三一アイドルなど足元にも及ばない、この学校のアイドルだ。 「空木(うつぎ)くん、遅いね」 「資料室の片づけしてから来るって」 「空木くんが片づけ?」  ユイはそうそうと笑いスマホをポケットに入れながら立ち上がった。 「トイレ行ってくる」  るるるはそっぽを向いた。 「またタバコ? 校舎誰もいないわけじゃないんだよ」  少しうんざりしたようにるるるは云う。 「ばれるよ、そのうち。停学になってもいいの?」 「べつに。最悪学校辞めても予備試験さえ通れば司法試験は受けられるし」  そう嘯いて、ユイは二年の教室を出て行った。     
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