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風がそよぎ、緑の葉を揺らしている。
辺りは静かだ。
ルイスは黙って立ち尽くしていた。
――――その使い方が、本当に正しいか考えろ。
彼の言葉が、心に刺さって離れない。
禁忌の魔法を完成させたとき覚えた違和感。
それが再び胸をついた。
ガーランドが「はぐれ者」になる。この山に来るまで、それを食い止めようと思っていた。
果たしてそれは、正しいことと言えるだろうか。
眩しく笑ったサリィの顔と、頬に鱗を浮かばせた騎士の顔を思い出す。
ガーランドの左手は変色し、黒いカギ爪が生えていた。
――――とにかく、戻らなきゃ。
考えていても答えは出ない。
ルイスは歩き出した。
誰だって、呪いを受けるのは辛いものだ。
鱗の生えた騎士の顔を思い出すと、やっぱり答えは濁っていった。
ガーランドだって、解呪を望んでいるんじゃないだろうか。
ぐちゃぐちゃになる頭を無視し、ひたすら歩みを続けた。
山道には誰もいない。
夕焼けに濡れた木々の中、ルイスは一人、村へと向かった。
*
ふもとの村に辿り着いたのは、月が高く昇った頃だった。
暗い山道を無事に戻って来られたことで、ルイスはほっとしていた。
そして何より、ガーランドを救えることに、わずかな期待を抱いていた。
色々悩んだけれど、結局根底にあるのは、助けたいという気持ちだ。
この禁忌の魔法はとても苦労して手に入れたのだ。
あの青年が再び現れる前に、どうにかしてガーランドに渡そうと思った。
その先は、騎士と二人で考えればいいことだ。
ルイスは宿に辿り着くと、主人への挨拶もそこそこに、ガーランドの待つ部屋へと向かった。
階段を駆け上がるうち、彼を救えるという喜びと安堵が湧き起こってくる。
怒られたっていい。
ただ、もう一度あの優しい顔を見たかった。
「ガーランド、帰ったよ!」
ばん! とルイスは扉を開ける。
「遅くなってごめん、僕……」
その顔から、だんだんと笑みが消えていく。
「ガーランド……?」
部屋はしんと静まり返っている。
壁際のベッドには、誰も横たわっていなかった。
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