第三章 森の奥の叫び

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ルイスは必死に目を開ける。 青年のすぐ脇に、誰かが立っているのが見えた。 小さな少年がこちらを見ている。金色の髪は肩まであり、静かに輝いていた。青い瞳は深く、底が知れない。 「…………」 白昼夢だろうか。 その少年はあまりに美しく、まるで天使のように見えた。感情の読み取れない眼差しが、音もなくこちらを見下ろす。 ルイスが唇を開いた瞬間、彼はぱっと駆け出した。 白い光の中、その背はどんどん遠くなっていく。少年はあっという間に木々の彼方へ消えてしまった。 「げほっう……かはっ」 咳き込んで、青年が身を起こす。 ルイスはハッとして、慌てて彼の背を支えた。 いつしか青年から放たれた光は弱まっている。呪いの渦は光に呑み込まれ、何事もなかったかのように消えていった。 きっとさっきの少年は幻か何かだろう。それよりも今は、目の前の青年を落ち着かせるのが肝心だ。 「おい、大丈夫か」 顔を覗き込み、まっすぐに見つめる。 彼は答えない。 それでもルイスは、青年が生きていることにひどくほっとしていた。横顔を見つめながら、そっと口を開く。 「顔色が少し良くなってる。……やっぱりあの魔法、万能みたいだな」 なんとか笑いかけると、ベルナールが鋭くこちらを睨んだ。 「……あんた……」 その目から、一筋の涙が零れ落ちた。 「あんたなんか、大嫌いだ」
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