162人が本棚に入れています
本棚に追加
ラルフはこちらを見たまま、探るような口調で尋ねてくる。
「あなたに一つお聞きしたい。私の妻になる気はありますか?」
急に何を言い出すのだろう。ディアナは慌てて答えた。
「は、はい。もちろん」
彼の目を見て、はっきりと言葉を続ける。
「わたしはガレドニアの王女ですから」
「ふうん、ガレドニアねえ……」
ラルフはうっすらと目を細め、ゆっくりと口を開いた。
「もしも、もしもの話だ。――片方しか選べなかったとしたら、どうしますか?」
「片方……?」
彼が何を言いたいのか、はっきり分からない。
食い入るように彼を見つめ、唇を開いたその時。
甲高い悲鳴が、城の方から聞こえた。
二人ははっとして顔をあげた。
悲鳴は侍女のもののようだ。
「誰か、だれか来て――人が……!!」
ディアナはぱっと駆け出した。その後ろを、慌ててラルフが追って来る。
二人で急いで城に戻れば、そこにはもう人が集まっていた。
吹き抜けになっている回廊の一つ、そこで侍女が震えていた。
彼女の視線の先には、礼服の騎士が倒れて死んでいた。
服の色からして、この国の者ではない。グスタフ王の護衛の一人らしかった。
犯人はうまいこと、相手の急所を狙ったらしい。死体の胸からはどくどくと血が流れ、床を真っ赤に染めていた。
陽射しの降り注ぐ回廊で、それはあまりにも場違いな光景だった。
「一人でいるところを狙われたか……」
そう呟いたのは、騒ぎを聞いて駆け付けたグスタフ王だ。どうやら事件が起きた時、護衛は厠から帰るところだったらしい。
「困ったものだ。一体誰がこんなことを……」
彼が視線を上げる。
既に集まっていたディアナの父や叔父は、緊張した面持ちになった。
ガレドニアの城で、オルグラントの騎士が殺されたのだ。
これでは同盟が揺らぐどころか、立ち消えになってもおかしくない。
最悪の場合、もっと酷い事態へ発展する可能性もある。
「うわぁ、こいつは酷い」
野次馬の中で、誰かがそう漏らした。
ディアナは顔をあげる。
人々の輪の中に、金髪のいとこの姿が見えた。
「腹をざっくりと……容赦ねぇ」
ハリスは眉をしかめながらも、どこか面白そうに死体を見ている。その頭に叔父のげんこつが落ちた
最初のコメントを投稿しよう!