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とにかく、少女は少し腹が立っていた。
彼があんまり馴れ馴れしいから忘れかけていたが、結局この男は瓶を目当てにやって来たに過ぎない。
さっきだって、こちらの隙をつくためあんな風に優しくしたのだろう。
その一挙一動にどきどきしてしまった自分が、恥ずかしいし腹立たしい。
「さすがの僕もそろそろ怒るぞ。あんまりおふざけが過ぎると、本当に切るからな」
そう言ってやると、青年は静かな視線を向けてきた。何かを押し隠した目で、どこか寂しそうに笑う。
「切れるなら、とっくにやってるだろ」
緑の瞳が、まっすぐにこちらを見つめている。
それがなぜか、泣きそうに揺れた気がして、少女はたじろいだ。
「俺だって、いつまでもこうして遊んでいられる訳じゃないんだ。それなのにあんたは、俺が近づくのを許して、いつも隙ばかり見せて。……いつ殺されてもおかしくないんだぞ」
その言葉に、少女はわずかに目を見開く。
彼は愛おしそうに目を細め、下手くそな笑みを浮かべた。
「あんたって本当、酷い奴だ」
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