12人が本棚に入れています
本棚に追加
僕が芹沢 ノンさんに出会ったのは、高校1年の冬頃。部活のシーズンが終わって少し時間が出来始めた頃だった。テストも近くて、部活も休みだら自主練しようかなんて思っていた時。
本人は僕の事を知ったのは2年の春だけど、僕が彼女を知ったのはその時だった。
「はっはっはっは……ん?」
いつもの様に学内をジャージで走っていると、校庭から見える図書室の窓際で本を読んでいる彼女を見つけた。当時は違うクラスで、名前も知らない彼女を見つけて、何故だか知らないけれど、僕は止まったんだ。
その違和感には直ぐに気付いたけどね。
(……涙?)
無駄に視力の良い眼に映ったのは、本を読みながら静かに涙を流している彼女の姿。風に少し揺られて流れる長い黒髪が印象的だった。何故泣いているんだろう?そんなに悲しい話だったのだろうか?ふとそう考えてしまったが、それ以上に、
なんて素直に泣けるんだろう。
その日から僕は偶にだが、図書室に居座る彼女を見る様になっていた。
後々知ったが、彼女は所謂『高嶺の花』というものらしい。自分の事を余り言わず、友達の最低限。近寄り難い雰囲気に惹かれる人も多かった。だが告白しようとすると、何故かするりと姿が消えるらしく、誰も校舎裏に呼び出せなかったらしい。
放課後、彼女は図書室に居る事を誰も知らないのだろう。放課後になると、まるで霞の様に消える事から『霞姫』と言われる始末だった。本人はそれを聞いて可愛らしく照れていたけど。
最初のコメントを投稿しよう!