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僕と彼女が初めて会話をしたのは、彼女が初めて出会ったという家庭科の授業の時。
「よろしくね、芹沢さん」
「え、うん、よろしく……?大きいね、クマさん?」
「クマ?」
「ごめん、なんでもない」
そんなスタートだった。僕としては既にその頃から彼女が好きになってしまい、良い所を見せようと張り切ってたんだ。昔から父さんの手伝いをしていて本当に良かったと思う。それでいつもの様に調理してイタリアン風に仕上げた。
彼女はそれを不思議そうに、けど少し目を輝かせてずっと無言で見ていた。周囲の同じ班の人は凄いと口々に称賛してくれていたけど、彼女だけは終始その状態だった。
(なんだろう……値踏みでもされてるのかな?)
それなら満点が欲しかったけど、食べている間もずっと無言で、けど誰よりも最初に食べ終わると。また僕をずっと見ていた。
そして授業終わりの時、皿を洗っていたら、隣に寄って来て、見た事無い顔でこう言うんだ。
「ねぇ、貴方名前は?」
「え?……ああ、球磨川だよ。球磨川 太一」
「じゃあ球磨川君。良ければなんだけど、私に料理を教えてくれないかな?」
その時、教室内がザワついたのを僕は忘れない。
「そんなに美味しかった?」
「分からない。同じ様な物を食べた事は多分あるんだけど、個人であんなに美味しいのは初めてだったから……なんというか、ごめんね?」
「何で謝るのか分からないけれど、僕で良ければ」
「ありがとう……」
そして僕等の関係は始まった。正直有頂天だね。
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