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「………10分後………。」
少女は駅のホームで時刻表を前にそう呟く。
屋根のおかげで直接日が当たることはないが、日向では陽炎が揺らいでいた。
「あっちい………なんか涼しいもんないか………。」
階段を上がってホームへと来た男が手に持った花束を少女に向けながら死にそうな声で話しかけた。
少女は階段とは反対側を示し、
「あっちにアイスの自販機あるわよ。」
と言った。
「まじか、買ってくる。」
男は少し元気を取り戻し、自販機の方へと歩く。
少ししてアイスを片手に男が帰ってきた。
「………10分後………。」
時刻表を見て、男は知り合いの少女と同じことを呟く。
「時間に正確ね。ま、それが良いところだけど。」
「あーあ、一日が30時間とかにならねぇかな………。」
「それしても電車の時間は変わらないわよ。」
「だよなぁ………。」
会話が途切れる。
ジリジリと日差しがレールを焼く音と、セミの音、そして男がアイスを食べる咀嚼音がその場を支配する。
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