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アイスを食べ尽くした頃、少女の幼馴染の男が口を開く。
「最近どうよ?」
「どうもこうも、酔っぱらいが外で騒ぐわ、暴走族はうるさいわでホント嫌になるわ。」
「相変わらずのようで。」
男は花束をホームの端へ置く。
それに向かって手を合わせた後、少女に向き直る。
「まあ元気そうで何よりだ。」
「そりゃどうも。あんたこそ、学校はどうなのよ?」
「そりゃもう普通に授業受けて普通に単位取ってるよ。」
「相変わらずのつまらない報告ね。気持ちはわかるけどシャキっとしなさいな。あんたにはあんたの生活があるんだから。」
「………わかってるよ。」
ある出来事の後からフワフワとしていた男は視線をそらす。
少女はため息をついて、それから彼の目を見る。
「なら、しっかり勉強しなさい。しっかり生きなさい。それが私のためにもなるから。」
「…………卑怯だぞそれ。」
「らっきょうは好物よ。」
その返事にため息をつくが、すぐにその顔は笑顔に変わる。
「ったく、わーったよ。ぜってー認めさせっからな!見とけよ!」
「ふふ、いつまでも待つわよ。」
二人が笑顔になった時、電車が駅に止まる。
「………時間か。」
「そうね。…………ねぇ、また来てくれるわよね?」
少女の問いかけに男は笑顔で答えた。
「あったりめーよ。例えこの10分しか会えないとしても、この10分のためにまた来るよ。」
男は列車事故で死んでしまった幼馴染に笑顔を向けた。
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