わたしがしんだりゆう

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20XX年 7月X日  あなたの名前は、吉木愛美。 あなたは、朝起きたらまず洗面所で顔を洗う。 あなたは、ご飯を食べて、制服に着替える。 あなたは、いつもの7時50分発の電車に乗る。 あなたは、次の駅で友達と合流する。 あなたが、学校に着くとクラスの人たちは皆、 あなたに挨拶をする。 あなたは、授業中、ノートに細かく板書を写す。 あなたの、最近のお気に入りはピンクのシャーペン。 あなたの席は、昼休みに人がたくさん集まる。 あなたは、昼ごはんを大勢で食べるのが好き。 あなたは、放課後には友達と一緒に買い物に向かう。 あなたは、楽しそうにワンピースを選んでいる。 あなたは、週末はデートに行く、と話している。 あなたは、友達と別れて、自宅への帰り道を歩く。 そう。ここしかない。あなたが、一人に、なるのは。 あなたは、後ろから首にロープをかけられて、ひどく驚いている。 「どうして……」 あなたが、最期に言った言葉はそれだった。 あなたには、きっと自分が死んだ理由なんて分からないんでしょ。 あなたは、私から友人も彼氏も何もかも奪っていった。 あなたは、そんなつもりじゃなかった、なんて言うんでしょ。 あなたは、名前の通りそこにいるだけで愛される美しい人だもん。 “私”じゃ愛されないもん。 “私”は、いらないもん。 “私”は私が嫌いだもん。 だから、明日から、“私”は吉木愛美になる。 これが、私が私を殺した理由。“私”が死んだ理由。
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